絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

日本画制作の為の裸婦デッサン6 No. 62

焦燥

 いつまでも繰り返すToの騒ぎたてに、僕は焦りと苛立ちを覚える。

 その焦りの一番の要因は、早くモデルさんに謝りたいという気持ちで、ポーズの時間が来たり、細々とした事柄等で、謝るタイミングを逃してしまうということ。

 少し前まで、Toと一緒に僕やモデルさんの悪口を言っていたメンバーの内の1人は「喧嘩は外でやれ!」等と、自分は無関係であることをアピールした発言をしている。

 これは個人どうしの喧嘩ではなく、このアトリエ(教室)内の生徒全員の問題なのだ。

 後で考えれば、このことに対しての適切なやり方は幾らでもあったのだが、僕は痺れを切らして相手にする。

「いつまでやってんだ。いい加減にしろと言ってるだろ!」
僕はそう怒鳴ってToに詰め寄り、胸ぐらを掴みながら話しかける。
「俺の事だけを馬鹿にするなら我慢してやるけど、モデルさんは関係ねぇだろ。
お前達は、何で関係ない人間まで馬鹿にしていくんだよ。」

 僕はToの胸ぐらを掴んだまま、アトリエの外に連れ出そうとする。

 そこへ同級生のS(男子生徒)とTaが、仲裁者の建前で間に入って、僕をだけを止める。
「悪いのはToじゃなくてみんななんだ」

 そう語るS(男子生徒)も、いつも飽きずに僕の悪口を言っている中心的な人物で、実際に僕の授業の妨害をしていたり、モデルさんのポーズ中に性器が見えると語り、大笑いしていた人物の一人だ。

 細部の話は省いてきたけれど、S(男子生徒)やToや他の何人かの生徒は、午前中の講義の授業でも「早くシね!」と叫びながら、僕にゴミをぶつけてきている。

 僕はそのことも含めながら「いい加減にしろ」と怒り、幾つかの会話のやり取りをしているのだが、ToとSとTaは、それぞれに僕側の言い分を理解していながら、わざと内容をすり替えて反論する。

 午前中の講義の時間に、モデルさんの悪口なんか誰も語らない、とか。

 一年以上も前から今に至るまで、僕へは危害を加え続けてきただろう、という話に対して、 そんな一年以上も前の事なんか憶えていないと語り、そんな昔の事で今頃暴れられても困ると語る。

 仮に、モデルさんの悪口を俺達(Ta等)が言っていたとして、そこから高木が怒ってしまう意味が理解できない、とか。

 全部が高木側の勘違いで、俺達(S等)は何も悪くない、等々。

 そんなグチャグチャの会話をしている内に、K先生(男子)を中心に、何人かの教員達がやってくる。

 当然の事ながら、同級生の誰かが研究室へ行き、呼んできたのだ。

 

 K先生(男子)は「いったい何があったんだ」と聞いてくる。

「何人かの生徒達が悪ふざけをしていたので、僕は怒りました。」

 こんな感じの言葉から始め、この問題は僕とToだけの問題ではなく、多くの人物が関係している根が深い問題であり、それを殆どの生徒達がわかっていながら黙り、知らない振りをしていること。

 この問題の始まりは、デッサンでS先生とI先生とで、僕の絵に対して怒り怒鳴り散らしてきたことであり、そこに同級生達が同調しながら嫌がらせを行ってきている。

 こういう話をしている時に、I先生は口を挟む。

「でも、全部悪いのは高木なんだろ」

 このI先生の遮りで、僕はこれ以上の話をしても無駄だと考え、説明することを辞めてしまう。

 このトラブルは、これ迄の教員達の指導とも関係していて、そのことを直接関係している教員達は受け入れないだろう。

 だから僕は、教員達を第三者とか中立というつもりでは見れないもので、そういうつもりや立場でこの話に入ってきて欲しくない、と語る。

  僕がこう語ったつもりでいるからといって、教員達もそのまま理解したわけではなかっただろう。

 僕自体は頭も悪くて、適切には動けていないし、整理された考えで語れてもいないから、K先生(男子)を中心にした教員達は、僕の話を聞いても、何の理解もできない状況だっただろう。 

 それでもK先生(男子)は、当事者同士で解決したいのだろうと察し、

「話し合うなら、当人だけでやらない方がいい。間に誰か人を入れたいなら、俺がなってもいいからな」

 という返答をする。

 それから「少なくとも、モデルさんには迷惑をかけているのだから、モデルさんには謝りなさい。」と僕だけに言ってくる。

 ここでようやく、僕はモデルさんに謝って頭を下げる。

 Toやほかの生徒達に関しては「俺達は何もしていないから、謝ることはない」といって拒む。

 教員達は、これでこの問題は収束したと考えて、研究室(日本画の職員室)へ戻っていく。