絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

新入生歓迎会1 No.44

 新入生歓迎会

 新入生の歓迎会は、毎年の恒例であった。

 出席するしないに関わらず、2年生以上はみんな会費を払わなくてはならない、という流れで毎年やっていた。

僕は会費は払っても出席する気は持てないでいた。

 これ迄に書き綴ってきた様に、僕は入学して半年もしないうちから、同級生との人間関係も破綻していた。

 そんな僕が新入生歓迎会へ出席しても、まわりや僕も不快な思いをするだけである。

 新入生を歓迎しようと少しでも考るなら、僕はその会に出席しない選択が適切だと思えていた。

 そうして欠席した歓迎会のなかで、おかしなことが起こっていた。

 その場面に僕はいなかったので、その場面の情報は、全てある人物から聞いたことである。

 

 歓迎会のあった日の翌日

 僕はいつも通りに学校へ来て、午前中の講義を終える。

 その後は、日本画の校舎に向かって移動する。

 その途中にある彫刻科の校舎の前に、日本画の先輩のDがいた。
 親しい関係では無いのだけど、共通の(彫刻科の)知人もいて、お互いに顔見知りということもあり、僕は「こんにちは」と挨拶意するが、何の反応もない。
 僕の声は明らかに聞こえているのに、わざと他へ顔を向ける。
 まあいいや…深く考えず、僕は通りすぎる。

 通り過ぎてから、少し大きめな声が聞こえてくる。
「何でそんなことするんだよ。高木はいい奴じゃねぇか」
 僕の名前を出しながら、大きな声を出している事に驚いて振り替える。
 その日本画のDに対しして、彫刻科の先輩の江崎さんが怒鳴り怒っている。

 この江崎さんは、大学へ入学した当初に僕が入った柔道サークルの人であり、この一連の流れを見ていた。

 その柔道サークルも、僕は「日本画の件で迷惑をかけてしまうから」といって、早い時期に辞めてしまっている。

 たまたま物陰になって僕は気付いていなかったのだけど、その他にも、Dのまわりには彫刻家で顔見知りの人は何人も居た。

 

 この場で江崎さんが怒っているのは、Dが僕を無視したという単純な話ではなく、前提にある事情もあった。

 大学入学前からの知人や、僅かでも柔道サークルへ入った関係から、僕には彫刻課の知り合いが多くなり、僕を彫刻課の生徒と誤解している人もいた位だった。

 その彫刻の人達に、僕は日本画でのトラブルや事情等は、あえて説明してこなかった。

 それでも日本画の同級生等は、僕の彫刻科での交遊関係を壊そうと、「高木には日本画の友達はいない」とか「高木は日本画の先生達からももの凄く嫌われていて、同級生の誰からも相手にされない奴なんだ」といった話を、よく持ちかけていた。

 日本画の同級生である彼等が僕に対してそういう行為を行っていることに関して、彫刻科の友人や先輩達が『何でこんなおかしなことになっているんだ』と事情を聞きに来られたりすると、
「僕は変態だから、日本画では友達も出来なかったんだ。迷惑をかけちゃった様でごめん。」
 等と僕は冗談混じりで話し、「これからは、あまり僕に関わらない方がいいかもしれない」等といって、日本画の同級生達の時と同様に、僕は交遊関係を諦めようとする。

 それで交遊関係が切れていったのは日本画の生徒達だけで、彫刻科の生徒達は、逆に気を使ってくれて縁は切れなかった。

 そうして、そういうことをしてしまう日本画の生徒へ、彫刻科の知人達は怒ることで、僕の学年に限っては、日本画と彫刻の生徒間の関係は悪かった。

 彫刻科の知人からは、何度も繰り返し事情を聞かれていたけれど、僕は「それを話してしまったら、(彫刻と日本画での)仲直りや後戻りが出来なくなるから…」と言って、最後まで彼等に説明することはしなかった。

 

 それから、ここでも江崎さんとDが中心になり、僕のまわりで何が起きているのかを質問される。

 その質問に対して、僕はこの時もその内容に答えることはしかった。

 この場面でDの行ったことは、僕の挨拶を無視しただけではなく、その場に居た彫刻科の生徒達へ「あいつには係わらない方がいい」と語り始めたものだった。

 Dの言い分としては、先日の歓迎会で僕の名前が出てきて、友達がいないとか、関わらない方がいいとか、そういう話で盛り上がっていた。

 日本画の教員達も、その話を聞きながら注意する訳でもないので、教員が公認してしまう程の何か悪いことを、高木が行っているものとDは考えていた。

 だからあの場の話通りに、高木とは関わってはいけないものだと考え、彫刻科の生徒にもそう促した。

 Dが語ったのは、そういう内容だった。

 そこから何度も繰返し、
「誰と仲が悪いんだ?」
「何があって仲が悪くなったんだ?」
「誰が嫌いなんだ?」
 という質問を受けるが、僕は何も答えなかった。

 

 僕の感覚で普通に考えると、新入生歓迎会でそんな話を聞いたからといって、一緒になってそんな悪意ある行動をとるだろうか?という考えが浮かぶ。

 でも、現実の人の考えや動きというものは、理屈で考えればわかる様なことでも、まわりの悪意ある動向に簡単に流される。

 誰かの悪意に同調して流され、後になってからつじつま合わせの嘘をつき、自分は悪くないと語る。

 或いは、散々悪乗りしておきながら、自分は関係ないとか知らなかった等と語る。

 昔から言われているもので、どうしても日本人は、まわりに合わせた動きをしてしまう。

 これは集団心理的なもので、ずっと仕方ないと思ってきた。

 そして、こういう細々としたトラブルも含めて相手にせず、人間関係を諦めて孤立し、絵を描くことに集中しようとしていたのが僕だった。

 

 この後も、まだ何かが起きるかもしれない…
そう思っていると、その何かはやはり起こってしまう。