ガラスと布を組み合わせた静物画1 No.35(34は統合しました)
No.34の話は省きました。
ガラスと布を組み合わせた静物画
今回の話は、夏休み明けの課題になる。
課題の内容としては、複数のガラスや布等、それと任意のモチーフを組み合わせて描く様に指示されていた。
そして、僕はこの「静物画」に照明器具と石膏像を組み合わせて描くことにした。
日本画制作には、下図と本画というものがあって、本画という作品自体の為に、下図という下絵を幾つか描いていく。
この課題には、僕なりに幾つかの意図を持ち、教員達の教えてくる内容に矛盾する題材を選んでいた。
この時に僕が選んだモチーフに、照明器具と石膏像である。
敢えて矛盾した題材で絵を描くことで、入学当初から疑問に思っていた「日本画の光や影」の問題に、今度こそ触れて問題解決に繋がる会話ができるのではないか。
そんな意図を込めた、課題の制作でもあった。
石膏像の話から。
受験や基礎の勉強では、西洋の有名な彫刻作品を複製した石膏像が出てくる。
その複製の石膏像は、北海道でも東京でも沖縄でも、どの地域でも同じかたちのものが流通している。
だからこそ、その石膏像を描いたときのかたちの狂いは、その石膏像を知っている人ならすぐにわかってしまう。
その石膏像を使い、鉛筆や木炭で描く訓練を行う場面が基礎訓練にある。
その石膏像を描く際、或いはデッサンの初歩的な理屈などにも、最初に出てくる話は「光」と「影」である。
石膏像の表面は石膏だけで形を作っている。だから、色は白く(石膏そのものの色)単色である。
絵画の基礎訓練として石膏デッサンを行う場合、その白い石膏像に現れる「光」と「影」を追いながら形を捉えて描く。
美術大学へ入学した当初の言葉、
「光や、光が当たった結果現れるものは、一切描かない」
という理屈とは、噛み合わないモチーフなのだ。
照明器具とその照明器具の発する光は、石膏像の考えと同様の意図のものだ。
「光や、光が当たった結果現れるものは、一切描かない」
そんな前提で、日本画の授業は始り進められているだから、このモチーフを選んだ時点で怒られるかもしれない。
でも仏画などで、お釈迦様が光を発している絵だってある訳で、大学での課題だから光りはダメとなるのか、日本画で扱われる光についての話が聞けるのか、そんな会話が出来るかもしれないという期待もあった。
だから、もしモチーフの件で怒られたなら、日本画の影の問題や、この大学の教員達の考えを知るチャンスになるかもしれない。
もし怒られるのであっても、絵について前向きな会話が出来るのであれば、僕にとってはそれでよかった。
この絵が完成したとき、教員たちの反応や、その後の関係はどうなるのだろうか…