絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

竹籠と野菜の静物画1 No.19

竹籠と野菜の静物

 みっつ目の課題は、竹籠と野菜を組み合わせた静物画だった。

 この課題が始まる直前、S先生からは「どれだけ描けるのか、やって見せてみろ(どうせ大したもの描けないだろ)」と怒鳴られていた。

 だからこの課題では、僕の思うように描いてよい、という話になっている。

 しかし、そういう発言をしていたのは、二年生の担当教員であるS先生である。

 教員間で、僕には(絵の)力がないとか、意味不明な抽象画をやろうとしている、等といった勝手な解釈だけは、共有されている。

 でも、S先生が僕に対して語った、制作に口を挟まないとか、今回は出来上がった課題に対して指摘する、という僕にとっての大事な話は共有しない。

 

 そして、このやり取りに関与しているA先生(女子)であっても、そんなやり取りなど無かったかの様に、これまで通りの指示を出してくる。

 『言われたことをやりなさい』とか『同級生を見習って、みんなのレベルに追い付く努力をしなさい』とか、そんな粗い言葉で怒ってくる処も一緒である。

 この課題に手をつける前、S先生とA先生(女子)と僕とでやり取りしたことなど、何一つ反映していない指示ということもあり、僕はただうんざりしていた。

 はじめの内は、

「今回は、僕のやり方でやっていいことになっている筈ですので、僕のやりたいようにやらせて下さい。」

 と返答をしていた。

 それでもA先生(女子)は、『言われたことをやりなさい!』と声を粗げて怒ってくる。

 そんなやり取りを数回ほど繰り返して、僕は学校での制作を諦め、課題を自宅へ持ち帰って制作する。

 僕はS先生に対して『教員達の指示を無視すれば、それなりのものを描く自信がある』と豪語していたし、それを見せる約束をS先生とA先生(女子)に対して行っいた。

 そのか約束の邪魔を、されたくはなかった。

 

口には出せなかった本音

 この課題の辺りでは、何やらおかしな学校に来てしまった気持ちで一杯だった。
 でも、どこかで僕の至らなさや勘違い等が発覚し、そこからお互いに納得しあい、皆で笑いながら解決…そんな展開がいつか来ることをずっと願っていた。

 しかし、そんな展開になることは、最後まで無い。
 教員達の僕への発言は、粗っぽく責め立てるものになっていたし、僕側の話も多少は聞いている素振りをしながら「どうでもいいことしか考えていない」という言葉で、いつも話を打ち切ってしまう。

 そのやり取りを見ている何割かの同級生達も、その真似をして、僕を批判し馬鹿にした接し方ばかりしてくる。

 そんなものは誤解であり、その誤解もいつかは解けると信じていた。

 誤解が解け、そこから人間関係が始まり、絵について語り合ったり、技を競いあったり、そんな未来を思い描いていた。

 そんな視野を持って、いま起こっている誤解による衝突も、僕側は真摯に対処し、目先の嫌な思いは我慢するつもりでいた。

 僕がそんな考え方をする者で、お人好しであまっちょろい存在だから、いつも悪意の標的になり、次々とトラブルは被さっていたのだろう。

 

 我慢を決め込んでいた僕だけど。

 僕へ絵を教えてきた人達を指して、『程度が低い』等とバカにされると、僕は我慢を出来なかった。

 この頃の僕の心のなかには、高校時代に絵を教えてくれた平田先生への気持ちが強かった。

 病気で、もう長くは生きられないと言われている。

 その平田先生の自慢の教え子として、恥ずかしくない勉強をしようと、この美術大学へ入学してきた。

 一年間の浪人をして、色んな先生に絵を見て貰いながら、あの頃の自分が出来るだけの努力はしてきた。

 本当はもう一年浪人して、有名な美大や芸大への受験を挑戦したい気持ちもあった。

 そんな気持ちを抑えて、美術大学への入学を急ぎ、しっかりした技術を身に付けようとしていたのがこの時だった。

 

 そんな事情なんか、誰も知らないのはわかっているが。

 お世話になった絵の先生達を、程度が低い人達だったと受け入れて、教わってきたことを全て忘れろ、と言われている。

 大学の助教授だからといって、そんなことまで言われる筋合いはない、と僕は反発してしまう。

 それを口にするS先生やA先生(女子)も、意地になってそのことで責め続けてくる。

 それを見ている同級生達も、それを真似していく。

 そんなことを、美術大学助教授という立場で自信を持って語っているS先生やA先生に(女子)であっても~

 その絵の指導や指示を聞いても、描いた絵を見ても、僕には彼らに力がある様には感じ取れない。

 同級生達の絵を見ても、高校とかの美術部くらいのレベルに見えてしまう。

 そう考えてしまうのは、僕も冷静に事実を見れていないせいなのかも知れない。

 僕は、生徒で教わる立場であるのだから、教員の失礼な言動にも我慢しなければならないのはわかっている。

 でも、この件だけは黙っていられなかった。