労働審判5 No.146
シフト表の再現
弁護士さんからの促しでは、
『和解の話に入っていくしかない。
新しい証拠や話を持ってこれるなら話は別だけど』
という話を聞かされていた。
そこで僕の出した話は、シフト表の再現をする、というもの。
これ迄の訴訟のなかで、僕は毎日、ホール作業全般をしている主張をしてきた。
店長業務も一部は行ってはいたが、その業務は、他の従業員も多く出勤して手の空いた時や、閉店後等でないと手が出せない場面が多い。
全ては、会社幹部達の強要していた人件費の削減によるものから、その様な状況にも陥っていた。
この話を、言葉や文章だけで主張しても、被告側は認めない。
口頭で『やった』『やっていない』という話し合いをしていても、被告の提出してきた従業員達のアンケートという証拠により、『やっていない』という解釈を強める。
そこで、シフト表の再現をして、人員状況を具体的に見せる。
その再現したシフト表を被告は否定するだろうが、それならばシフト表の実物や、従業員達の出勤記録等を出してくるべきだ、という主張である。
シフト表の再現は、思っていたよりも苦労した。
手元には、僕自身のタイムカードの記録しかなく、3年くらい前の店の出来事や従業員達の状況迄もを思い出さなければならなかった。
それでも、当時に自分で作ったシフト表であり、幾つも不安な箇所を残しながらも完成させ、裁判所へ提出する。
それに対して被告からも、当時の従業員達の勤怠記録を提出してきて、細かな部分の違いを指摘しながら『高木の記憶なんか信用できない』とも文面に書いてきていた。
被告の勤怠記録を基に、シフト表を再現し直した。
被告側の提出してきた勤怠記録は、ずっと心配していた様な、捏造したものではなかった。
最初に作ったシフト表と、作り直したシフト表を見比べると、最初に作ったものはなかなかの再現をしていた。
勿論、従業員側の都合による稀な出勤日等の変更や、出勤している人数や時間は一緒でも、その人物は違う等、細かな違いはそれなりにあった。
そういう細かな部分へ、被告側は『違っているじゃないか』と指摘もしてくる。
しかし、重要な処はそんな部分ではない。
僕が一人で店番をしている場面があったり、休憩や出勤を遅らせている場面(僕のいない場面)には、必ず従業員は2人以上出勤していたこと等、僕がホール作業を行っていた状況を否定できない情報として扱うことができた。
それでも被告は『高木は管理監督者であり、店舗の全ての責任は高木にあった』と語り、『人員が不足しているのであれば、原告が自身の権限で人員を増やせば良かった』と反論する。
最後の証拠
僕が管理監督者であったという問題は、裁判官の考えや理屈上からも、否定はされている。
それでも被告は、そこを言葉上では譲らない。
そこに対しても、僕は幾つかの証拠を用意できた。
消防署と市役所へ行き、個人情報開示請求を行い、『防火管理責任者の記録』を手配して貰った。
この『防火管理責任者の記録』に関しては、僕個人に関する記録しか明記して貰えない。
僕が退職する一年くらい前から、防火管理責任者の資格を取得して、僕は店舗の責任者となっている。
訴訟のなかの被告の主張からは、カラオケ店へ移動した時点から、僕は既にカラオケ店の全責任を負っていたことになっていて、矛盾がある。
それともうひとつ。
Y本部長が店長業務を行っていた、パチンコの新店舗がある。
そこで過去に働いていたKという従業員と連絡をとり、訴訟の事情を説明した上で、LINEのやり取りをして、そのやり取りをスクリーンショットで画像保存し、証拠とした。
LINE等の記録は、一応は証拠になるけれど、証拠の性質としては弱いものになるそうだ。
Kに語って貰った話としては、退職したカラオケ店のM(元)店長のこと、サービス残業のこと、会社への不満、店長業務を行っている者達はホール作業をしていないこと、等々。
やり取りの最後に、必要となった時には、形式を改めて、再度の証言をすることへの了承をして貰い、締め括った。
このKという人物は、会社の待遇の問題に対して、会社の幹部達とずっと揉め続け、最後にはクビになった者でもあった。
被告の社長としても、Kに証言されるというのは、色んな意味合いで痛かっただろう。
これ等の証拠や主張書の提出を行い、被告からも反論を待った後、訴訟での話し合いの期間は終えることとなる。