絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

労働裁判4 No.145

和解案の拒否

 前回の訴訟で、被告は『裁判官の提示した額では了承出来ないが、検討してみる』という返答をして終わった。

 そうして、次の訴訟では『裁判官の提示したその額でなら、和解してもよい』という返答を持ってきた。

 しかし、原告である僕は『やっぱり和解の話し合いはしません』という返答を用意していた。

 そういう返答を弁護士さんにさせる過程でも、それなりの苦労はしていた。

 僕は弁護士さんに対して『主張すべきことを、きちんと主張して貰ってきたとは思っていません』と強く語り、それでも和解を強引に押し進めるならば、弁護士さんを解任して、別の弁護士さんと契約をするつもりで動いていた。

 依頼者である僕にそう言われると、弁護士さん側も強行は出来ず、この流れとなった。

(勝手に僕がそう思っているだけで、弁護士さん側はきちんと仕事はしているのかもしれない)

 被告にしてみれば、原告から話し合いをする上での最低ラインを引出し、渋りながらもその最低ラインでなら和解をしてもよい、という流れで話し合いを進める予定でいた(と僕は思っている)。

 この流れも、僕は被告側の罠と考えていて、僕は五分くらいで結論を迫られながら、被告はひと月も検討する期間を持てたことにも、不満をもっていた。

 その被告側は、和解に向けた何かしらの準備をしていたのに、原告である僕からは、一度は和解への話し合いを了承したのに『やっぱり和解の話し合いはしません』という、小馬鹿にされたような断られ方をする。

 このことで被告側の社長は、訴訟中の裁判所で「何で和解しないんだ!」と怒鳴り叫び、その場に居た人達は驚いていたという。

 後日、この話を僕は弁護士さんから聞いて、笑ってしまった。

 あの社長らしい言動だと感じたのと同時に、ずっと被告のペースで訴訟が進んでいたけれど、そのペースは崩れ始めているのではないか、と感じた。

 流れは変わりつつあるのではないか、という思いも持てた。

 

労働審判の裏側

 もう少し細かな話を追加すると。

 訴訟の最初の何ヵ月かは、弁護士さんからの説明から、僕は労働審判を行っていると考えていた。

 しかし、前以ての説明とは異なり、実際には民事訴訟であった。

 この違いは、終結までの期間の違いだけではない。

 労働審判は、基本的には非公開としているものなので、僕は労働審判について、まわりに語らないようにしていたし、情報収集の為に聞いてまわることも控えていた。

 それから、実際に行っているのが民事訴訟であることを知っても、それ迄の流れのまま、誰かに聞いたり語ったりすることもしていなかった。

 気持ち的にも、そんな余裕はなかった。

 それから暫くして、被告の会社の社長が怒鳴り叫んでいた件を耳にする。

 もしかしたら、被告側は上手くいっていない部分や苛立ちもあって、冷静で居なければならない筈の裁判所でも、怒鳴り叫んでしまったのではないか。

 僕が勝手に思い描いていた被告の状況は、余裕を持って、笑いながら打ち合わせをしているものだった。

 未払いの残業代請求を受け、最終的には支払わなければならないのを理解していて、その支払い額をどれだけ少なくするか、原告である僕を馬鹿にしながら、いかに恥をかかせて嫌な思いをさせるか、そういう目的の打ち合わせをしながら訴訟に挑んでいると考えていた。

 

 僕の未払いの残業代なんか、会社にとっては微々たるもので、請求額の全てを支払っても痛くはないだろう。

 パチンコ店へ勤務していた頃。

 給料日が近付いてくると、従業員の給与明細書は、倉庫となっている社長室へ無造作に置かれる。

 そこで何人かの従業員は、無造作に置かれている給与明細書を見ている訳である。

 いつも事務所にいて、機嫌が悪くなると従業員達へ八つ当たりばかりするS専務(当時は常務)は、月に100万円貰っているとか、高価なゴルフクラブなんかも会社の経費で落としている等と、いつも従業員間で語られていた。

 僕はそのパチンコ店へアルバイトのかたちで入社して、先輩従業員達の嫌がることも率先して行い、異例の早さで正社員になった。

 サービス残業や、細かな仕事も家に持ち帰って行なったり、電池みたいな細々としたもので自腹を求められたりしながら、月に二十数万円の給与を貰っていたのだが。

 やる気がないと自分で語っていたある先輩従業員が、入社してから5~6年、昇給して手にする様になったこの時点の給与額と、入社して半年くらいの僕の給与額に大きな違いがない、と怒っていた。

 100万円と語られている相手は、社長の息子という状況ではあるけれど。

 こういう格差のなかで、下っ端の従業員は馬鹿にされながら、駒の様に扱われていた。

 従業員間では、こんなことで揉めたりして、険悪な関係にもなっていた。

 こんな駒で八つ当たりの対象である僕の存在や、未払いの残業代請求なんかは、会社の社長や幹部達にしてみれば、暇潰しや笑い話のネタくらいに扱われていると思っていた。

 

 社長が怒鳴り叫んでいた件から、少し情報収集をしてみる。

(因に、情報収集の手段などは、語ることはできない。)

 すると、当時のS専務とS常務は、訴訟の始まる前後に退職していた。

(細かな話をすると。僕が退職する一年くらい前、2人は社長へと昇進していた。)

 訴訟のことで社長から責められて、2人はクビか自主退職したのではないか、という噂にもなっている。

 あくまでも噂として聞いただけなので、真相はわからない。

 この話を聞く限り、僕の残業代請求は、被告の会社幹部に大きなダメージを与えていた可能性もある。

 訴訟で苦しんでいるのは、僕だけではないのかもしれない。

 

 ただ、社長の息子さんに関しては、ほとぼりがさめたら、また会社に戻ってくる気もしている。