絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

上司の強要への抵抗3 No.134

メニュー変更の結末

 メニューの入れ替えを実施する過程では、社長へ報告しなければならず、そのことで社長やS本部長などもこの問題に関与してくる。

 メニューの入れ替えと同時に、10年以上使い続けたカラオケ機を買い換え、複数の事柄を盛り込んでカラオケ店の売上を伸ばそうと試みる。

 

 補足的な話。

 多くのカラオケ店のカラオケ機は、レンタルという形式で導入する。

 そうすることで、毎月の利用料金を払い続け、長期的には、カラオケ機を買い取るよりは高くつくことにはなるけれど。

 カラオケ機の新しい機種が作られ、新しい性能を追加したりされた場合等には、レンタル契約を切り替えることで、買い取った場合よりも容易に新しいカラオケ機を導入できることとなる。

 僕のいた会社の社長は、レンタルを拒み買い取る考えを持つ。

 社長のなかでは、カラオケ機の新しいものが何度か出たくらいで、大した差はないと考えていたのかもしれないが。

 古い機種ほど、新しい曲の配信はされなかったり、新しい機種ほど、映像や採点機能などのコンテンツは充実されていく。

 そういう面から、同じ機種を使い続けるというのは、他のカラオケ店の機械の性能更新から置いていかれる。

 この会社は社長のワンマン経営であり、そこへ幹部達が意見しないこともあり、新機種の問題は社長の一存だけで決められる。

 

 僕はカラオケのことは疎いし、ずっとテレビを見るさえなかったので、世の中の流れや流行りの歌も全くわからない。

 居酒屋のことに関しても、僕にはアルコールへのアレルギーがあり、お酒に合うつまみのことや、酒飲みの気持ちなんかも全くわからない。

 十代の頃から、あまりカラオケ店へ行ったりはしない上、この会社に入社してからは、忙しさから交遊関係さえも遮断される結果となっていった。

 だから、余計にカラオケ店や居酒屋などへ行く機会はなくなり、他のカラオケ店の状況を探りに行く様な時間や環境さえも与えられていない。

 だから、カラオケ機の最新機種を導入したことで、よく来る顧客達がそこまで喜ぶとは思ってもいなかった。

 メニュー作りや店の管理にしても、Mの様にきちんと休みをとれて、奥さんと色んな飲食店へ足を運んでいるMの様な者こそ、主体的にやるべきだと思っていた。

 

 様々な準備を終え、新しい機種とメニューで営業を始める。

 新しいカラオケ機を目的として、来客数の伸びはあった。

 新しいメニュー構成も、冷凍食品を中心にして、飾り付けも最小限にすることで、手数を減らし調理・提供時間の短縮や、安く感じる価格帯で納めた。

 そうした部分でも、顧客からは良い反応は帰ってきている。

 とは言っても、売上や利益としての成果は僅かなものである。

 売上を伸ばすには、結果的に店を忙しくする必要があるのだが、人員を増やしては貰えない。

 カラオケ店へ来ているMも一時的なもので、この時までは社員2人体制であったけれど、Mはこの1~2ヶ月後にパチンコ店へ戻されていく。

 顧客の反応を見て、色々と微調整をしていくという2~3手先のことも計画していながら、そこへ踏み込む前にMはいなくなる。

 再び、平日の多くの時間は僕一人で店をまわし、週末もギリギリの人員状態を維持する。

 よくS本部長等がカラオケ店を馬鹿にして、こんな言葉を口にしていた。

 『飲食店の経営は馬鹿でもできる』

『忙しい場面なんか出来ても一瞬だけで、少ししたら直ぐに暇になるんでしょ』

 そういう偏った認識もあり、いつも会社や幹部達からいい加減な扱いばかり受けてきたので、こういう処まで予想通りだった。

 2~3手先のことというのは、売上が伸びることを前提としていて、よくなった実績を社長に見せながら必要な人員を増やしていき、体制を整えていく。

 そういう計画があっても、会社の幹部達が非協力的であり、カラオケ店の成果が上げることを良く思わない人達ばかりだ。

 うまく行かないことこそ、願ったり叶ったりの状況だろう。

 そんななかで、多少でも前進しただけでも良しと考えることにした。

 

 僕への評価に関しても『使えない奴だ』という予想通りの噂ばかり広まっていた。

 『高木は何年もずっとカラオケ店に居て、何の改善もせずに、アルバイトを虐めながら売上を落とすばかり。

 そこへMがやってきて、社長やS本部長と協力して、最新のカラオケ機を導入し、メニューも一新した。

 いつもパチンコ店で働いているMが、突然カラオケ店へ行っても、色々な改善は出来た。

 ずっとカラオケ店にいる高木は、いつも遊んでばかりで何の改善できず、今まで一体何をしてきたんだ。』

 一人でサービス残業して、休日も稀にしかとれず、準備の為にも多くの自腹も切らされて、そんな感じで動いてきた僕に対する評価なんかは、こんなものだった。

 幹部達が勝手にそう評価するのは仕方ないとしても、それを一般の従業員達にも話し、噂として広めるて当人の耳にも入るというのが、この会社の理不尽な一面でもある。