絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

退職願いとカラオケ店への移動 No.123

パチンコ店の退職願い

 専務へ退職の意思を伝える。

 具体的な退職理由として述べたのは、もう少し絵を描く時間を確保したいということだ。

 僕は使えない従業員という認識を持たれていたのもあり、僕がいなくなること自体に何の心配も持たれなかった。

 僕自身も、会社ではいつもその様に扱われてきたので、そんなものだと思っていた。

 退職した先輩従業員達も、退職する数ヶ月前には退職することを臭わせながら「俺達が居なくなったら、この店なんかまわらなくなるよ」等と語っていた。

 その発言には僕も反論していて。

「あなたが仕事できるのは判っているけれど。

 そういう人が何人か退職したとしても、会社や組織は、いなきゃいないなりに体制を作って会社をまわしますよ。

 自分が居なくなった後の店の心配よりも、自分のやるべきことをしっかりやるべきだと思います。」

 多分、僕にもっともらしい様な言葉をかけられて、また影で怒り狂っていたのだと思う。

 そういう経験を僕はしてきたし、僕が休憩もとれずに動きまわっていることも、会社の上司達は『無駄な努力』と小馬鹿にしてきたのだから、そういう部分の人員的な埋め合わせも上手くやるものだと信じていた。

 

 退職時期に関しては、会社の状況に配慮して、何ヵ月かは猶予を持つので、何ヵ月先に退職するかは会社の都合で決めてよいとした。

 僕の退職の話も、専務から社長へ報告し、了承もして貰った。

 僕の方からは、具体的に何ヵ月以内とは言わなかったが、退職までは一般的に言われている三ヶ月くらいの期間だろうと考えていた。


 配慮した状況というのは。

 S本部長の方針で、店舗の従業員は、本来必要な人員数よりも一人少ない状態を維持し、人件費の削減をしてきたことや、努力している状況を社長等に見せている意図もあった。

 そんななかで、4人の先輩従業員達は急に退職し、その変わりとして歴の浅いアルバイトを入社させたのだが、まだ数は揃っていないことや、入社したアルバイト達も従業員教育をまだ必要としている者達なのだ。

(教育に関しては、僕でなければならない理由はない)

 その他、新店舗での従業員トラブル(労働環境や待遇に関する不満)が多発していることや、カラオケ店の社員が揃って退職した(クビにされた)ことで、本部長はその対応にかかりっきりになり、それまでは専務と本部長とで店長業務を行っていたのが、この頃は専務だけで店長業務をやっている。

 店長業務といっても、いつも事務所にいるばかりで何をしているかはわからない。

 班長の立場にあった僕は、いつもホール作業ばかりで、特殊な場面を除いて事務所で何かをする場面もない。

 それまで2人でやっていたことを、この頃の専務は一人でやっているのだから、きっと大変な思いもしているのだろう…と考えていた。

 従業員間の噂で、営業時間の殆んどの時間はやることはなく、遊んでいるとか寝ているという話もあり、それで月給は百万円を貰っているとか、色々と噂はあったけれど。

 僕に対しては、家に仕事を持ち帰らせる程の状況なので、そんな噂を信じたり疑ったりすることもしなかった。

 そんなことについて考える余裕なんかも、僕にはなかった。

 退職が決定したことで、店開け作業を覚える為に、遅番(夕方から閉店までの勤務)であろうと休日であろうと、朝の8時前に来て開店作業をする指示はさすがに解除して貰えた。 

 

カラオケ店への移動

 退職する日の勧告を数ヶ月と待ち続けていても、会社は相変わらずでなんの勧告もなく、会員メール作りを家に持ち帰る状況も続いていた。

 入社してくるアルバイトも、定着する者もいれば直ぐに退職してしまう者もいる。

 だから、従業員教育を必要とする新人はこの頃もいた。

 シフトの組み方やサービス残業や休日出勤の問題も相変わらずで、次の職場を探せる様な余裕ある生活も作っては貰えない。

 

 それからある日、社長からの指示で、僕をカラオケ店へ行かせるように指示される。

 これは業務命令であり、僕側も従業員で働いている内は、出来る範囲で何でも協力するとは言ってきた。

それでも、この状況には疑問だった。

 この頃は、本部長もカラオケ店へ頻繁に足を運んでいる。
 何故なのかは、この時点では何も解らない。

 その本部長へ僕は話を切り出す。

「僕は何ヵ月も前から退職を切り出しているのですが、どこかできちんと退職できますか?」

 僕のその話に、本部長は怒鳴ってくる。
「辞めるつもりでいるなら、何で社長にカラオケ店には行きたくないと言わなかったんだ!面倒くさい状況を作りやがって。
やっぱりお前はいらねぇじゃねぇか!」
僕「僕の意思とか関係なく、行かせる指示が出されたんじゃないですか。

退職までの短い間であっても、僕が協力すれば、会社的に助かる面もあると思って従ったのですが、それが悪かったのですか?」
本部長「あーそうか、判った判った。黙ってろ。」

 僕の質問の結論には至らないまま、本部長は怒りながら話を打ち切る。


 そうして僕は、退職の話は保留のままカラオケ店で働く事となった。

 この頃は、この時期に入社してきたアルバイトのことで、幾つかの心配していた。

 その新人アルバイトの性格は大雑把で、教育時は手を焼いていた。

 指示には素直に従おうとするし、悪い人物でもなく、仕事を教えればそれなりに出来はする。
 でも、翌日以降や少し時間が経てば、すぐに手を抜いた作業や自己流の解釈のやり方に変えてしまう。

 この時期もいる先輩従業員達がそんな人ばかりで、その先輩従業員達でさえ、僕は彼等のやり方を直せてはいなかった。

 彼等にしてみれば、自分等よりも後に入社してきて上司になり、それでも上手く立ち回れていない僕の指示や注意など聞けないのだろう。

 そうして設備や接客上のトラブルなんかが起こり、そのしわ寄せは大概、僕や僕の後輩達に作業面で寄ってくる。

 その対処に僕があたるという状況に対して、誰もがそれを当然のことと考え、そこへ悪かったとか協力する考えを持たない流れもある。

 せめて新しく入社してくる者達が、それなりの仕事を覚えて、適当な先輩従業員達の作業へのフォローや、トラブルを回避するための対応も出来る存在にしてやりたい。

 こういう僕の考え方や教育や対処に対して、上司や先輩従業員達は僕の仕事を否定する。
『そんな事までしなくても、店はまわる』

『お前のやっていることは、無駄な努力でしかない』

 僕のなかで考えると、そうではないだろうとは感じてしまう。

 それでも、僕より多くの経験や広い視野を持っている人達なのだから、違ったやり方でもっと効率的に上手くやる筈だ。

 でも、僕にはこの程度の考え方しか出来ないし、やれることもこの程度なのだ。

 形式上は部下というかたちでも、先輩従業員達は一番短い人(アルバイト)でも4~5年くらいの勤務と経験を持つ(その割には働かないのだが)。

 僕のパチンコ店で働いた期間などは、この頃で1年過ぎた程度のもので、もう辞める日を待つだけの存在でもある。

 そんな僕が、いつまでも職場の心配をしていてもしょうがない。

 その後の職場の体制を整える為、退職までに数ヶ月の猶予を設けてきたのだ。

 そうして僕は、退職は出来なかったものの、カラオケ店への移動でパチンコ店を去る。

 

後日に噂される話

 後々に耳にしていく話として。

 この後のパチンコ店の従業員関係は、みんなで主任の仕事の姿勢を責めていく。

 4人の先輩従業員が退職した直後、店舗のホールが荒れなかったことで、僕が去った以降のことを軽視し過ぎていたのだろう。

 総量規制やパチスロ5号機問題等で、来客数が少なくなっていた状況もあるけれど。

 4人の先輩従業員の退職以降、僕は休憩もとらずに動きまわり、体制が崩さないようにという意識も持って仕事をしていた。

 大した危機意識も持たないで、大した対応もしないまま、あの時期を乗り切れた、それが店舗内の変な自信になっていた。

 『使えない高木が居なくなるくらい、何の痛手もない』

 そう考えて、僕が店舗から去った以降も人員の補充はしなかったし、役職者達はそれまで通りにしか動かなかった。

 それで店舗は、それ迄通りにはならなかった。

 

 話題として責められたのは主任ばかりであったけれど、これは主任だけの問題ではなくて、店長業務をやっている専務や本部長の問題でもある。

 それでも本部長や専務は責める側にまわり、そういう立場で社長への報告も行っていた。

 僕の心配していた新人アルバイトも、後には仕事上のミスの関係で職場を去っていった。

 僕の聞いた細かな話では、スロットのメダル洗浄機の清掃作業でのこと。

 はじめての作業の時、彼は直接教わることを拒み、店舗で作ったマニュアルを見て洗浄機を操作して、壊してしまう。

 年の近い者どうしというのもあり、教える・教わるという上下の関係を嫌がったのだろう。

 そうして洗浄機を壊した時も、その壊した者だけを責めてしまう。

 僕の視点や考えでいえば、それは指導にあたった従業員や、指導を指示した者の責任問題であり、一番責められるべきはそういった人物達である。

 こういう事柄を聞くと、普通の会社組織での感覚ではないのだと思う。

 新人が店舗に定着せず、人が増えず成長もせずに困っている。

 なぜそうなっているのか、傍目には簡単なことに見えていても、当人達はいつまでもそこに気付けずにいた。