ドルチェノフという名前の猫 3
ドルチェノフは、いつも僕を見つては、傍にきてゴロゴロとのどを鳴らしてくれました。
甘え方も少し控え目で、ドルチェノフから僕の膝に乗ってくることはなく、膝横に座ってゴロゴロいってます。
僕が寝ていても、布団の端のあたりで丸くなっている子で、布団のなかにまでは入ってきません。
ある日のこと。
僕はテレビゲームに集中していて、そこへドルチェノフはやってきました。
僕はドルチェノフのことをひと目だけ見て、テレビゲームを続けました。
僕から何かをしなくても、ドルチェノフは傍に来るだろうと思っていたからです。
でもドルチェノフは、少し僕の顔を見て、悲しそうな鳴き声を出して引き返していきます。
その様子を見て、僕はテレビゲームを中断して、笑いながらドルチェノフのところへいって、抱き上げて連れ戻したのでした。
そうして、またいつものゴロゴロがはじまります。
人に飼われている犬や猫は、人の家族の上下関係を認識しているという話もあります。
その上下関係は、実際のお父さんやお母さん、その子供といった、本来的な順位通りとは限らないことや、その犬や猫自身も、その家族のなかで一番下と考えていない場合もある訳でして。
思えば、ねこ(という名前の茶トラ)の子供たちは、いつもご飯をあげたり一番可愛がっている僕よりも、僕の兄の方になついていました。
色んな要素で、その子たちは一番になつくべき相手を判断している様でして。
その上でドルチェノフは、一番なつくべき相手は僕だと判断してくれました。
それにしても毎日々々 、ドルチェノフはいつも僕の傍に来てはゴロゴロと甘えます。
いつもこんな僕の傍に来て、僕という存在に飽きもせず、何がそんなに嬉しいのだろうか?なんて時々は思ってしまうのです。
そういう僕も、ドルチェノフがただ傍にいるだけで、毎日が楽しく嬉しい気持ちになりました。
僕の妹も、猫が好きです。
その妹のことを、ねこ(という名前の茶トラの猫)の子供たちやドルチェノフは、とても恐がっていました。
猫たちはみんな、妹の姿を見ると逃げ出します。
逃げ遅れて妹に捕まった子は、悲しく「アオーン、アオーン」と鳴いてしまうのです。
幼い妹は、猫たちを可愛がるつもりで強く強引に抱き締めようとするからです。
その行為を猫たちは嫌がり、逃げたり怖がったりしました。
当時の僕も幼く、そんな妹を見付ける度に「そんなことしちゃダメ」と怒ることしかできませんでした。
今にして思えば、僕は妹に、猫たちへ優しく接してあげることを教えてあげるべきだったのです。
それでも、僕がいて妹もいるという場面であれば、ドルチェノフは大丈夫だと判断して僕に近寄ってくるのでした。