そぼろくん 4
そぼろくんと仲良くなったのは11月頃。
12月に入って天候も荒れたりで、日増しに寒くなっていきます。
なんとか、そぼろくんの飼い主を見つけてあげたいところです。
アルバイトの女の子達に、段ボール箱でそぼろくんのとりあえずの家を作って貰い、里親募集のチラシも書いてもらっていました。
そぼろくんと接していた人は、みんなそぼろくんが好きでした。
アルバイト達で犬派だと名乗る子達も、やはりそぼろくんは可愛くて、家で飼えないかと検討していました。
猫が苦手だった子も、そぼろくんと接したのを切っ掛けに、猫が好きになりました。
それでも、それぞれの家庭には事情もあり、みんな、そぼろくんを飼いたいけれど飼えないという状態でした。
みんなに可愛がられる程、人見知りもせず大人しく甘えん坊なそぼろくんだから、飼い主なんかはすぐに見つかるよね。
そぼろくんの飼い主を探す前に、そぼろくんは動物病院へ連れていき、病気などの検査をすることを考えていました。
そぼろくんの存在は、招き猫そのものと思える程、楽しく嬉しい毎日を作ってくれます。
そんなそぼろくんが、誰かの飼い猫になって貰われていったときは、寂しくなるだろうと考えていました。
アルバイトのあの子はきっと泣くぞ、と思いながら、僕もそうならないように涙は気をつけなくちゃ…なんて少し先の未来を予測して、ニヤけていました。
動物病院に連れていく前日の夜には、僕の自宅に連れて帰り、嫌がっているのに無理矢理お風呂に入れました。
やっぱりそぼろくんも、お風呂は本当に嫌がっていました。
それまでそぼろくんは、僕に全く鳴き声を聞かせてくれなかったのですが、この時ばかりは「ニャーン!ニャーン!」と必死に鳴いていたのです。
その鳴き声を聞いて、申し訳ない反面、少し可愛く嬉しかったりもしました。
そうして連れていった動物病院でも、大人しく診察を受けるそぼろくんを、看護婦さんは気に入ってくれます。
「人を信頼しているのかな?すごくいい子ですね。病院でもこんなにいい子にしてる猫ちゃんはなかなかいませんよ。」
それから、お医者さんからは非常に悪い検査結果を話します。
こういう子の場合、いまは良くなっても、数年くらいで亡くなってしまうケースが多いです』
実は、動物病院へ連れてくる前日から、ご飯は少ししか食べませんでした。
それは口内炎が原因で、口のなかが痛くて食べられなかったそうです。
そぼろくんが僕の前でご飯を食べなくなったのは、前日からです。
でも、それよりずっと前から、口内炎は起こしていた様です。
それから看護婦さんから聞いた話では、猫の白血病は、野良猫どうしの喧嘩で感染すると考えられているそうです。
性格的に大人しいそぼろくんの場合、他の野良猫の縄張りに入り込んで、一方的に攻撃されて感染していたかもしれません、とのこと。
因みに、猫白血病や猫エイズ等は、猫どおしで感染しますが、人には感染しません。
それと、そぼろくんの顔の表情のこと。
そぼろくんは口内炎の痛みから、いつも口を微かに開いていたのではないか、と考えています。
口を空けていることで、頬から鼻にかけて強張った表情となって、いつもこんな顔をしていたのではないか。
そぼろくんは、僕と知り合う前から体を悪くしていたんだね。
すぐに気付いてあげられなくてごめん。
こんな状態では、飼い主さん探せないよね。
僕の家族になる?
でも、僕もいま飼えない事情が色々とあるんだがなぁ…