そぼろくん 3
そぼろくんの不思議。
そぼろくんは、カラオケ居酒屋に毎日やって来ます。
最初から心配していたことで、お店のなかに入ってくるのではないか、という問題。
お店の入口は自動ドアで、センサーさえ反応すれば、いくらでも入ってこれる状態にはあります。
しかし、お店の入口まで来たそぼろくんは、ドアが開いてもお店に入ってはきません。
そぼろくんは自動ドアの前までやって来て、ドアが開いて僕を見つけると、「ニャー」と鳴いている様に口を動かします。
でも、実際には鳴き声を出しません。
僕は仕事の合間に、窓からそぼろくんを覗きみますが、その時も、僕に気付いたそぼろくんは鳴いている様に口を動かします。
飲食店として、そぼろくんをお店のなかに入れることは出来ません。
その人間側の都合を、そぼろくんは理解しているかのように、最初からずっと守っています。
僕には不思議に思えるのですが、そぼろくんの心理はどうだったのでしょうか。
お店に出入りする従業員やお客さんに可愛がられながら、それでも、お店のなかは人の縄張りで恐かったのか。
或いは、お店のなかには入っていけない雰囲気を察していて、いい子にしていようと我慢していたのか。
その真意は、今もわかりません。
カラオケ居酒屋店は、12時から開店し、深夜1時(週末は3時)に閉店します。
営業時間内では、時々、お客さんやアルバイトの子達が、そぼろくんへご飯をあげたり遊んだりします。
でも、僕がゆっくりかまってあげられるのは、殆どが閉店後になります。
その閉店後、少しの間だけ遊んだり膝の上に乗せてやります。
多くの猫と同じく、そぼろくんも人の膝の上で寝るのが好きでした。
膝の上で寝ることを経験してからは、雑用関係で、僕が店の入り口を出入りしている時。そぼろくんは僕の足に手をかけて「膝に乗せて」と頻繁に求めてくる様になりました。
それでも営業時間内の僕は、殆ど構ってあげられませんでした。
僕が個人的に思っていることで、何かに書いてあったという話ではないのですけど。
猫が人の膝の上に乗ることを好むのは、人に守られている感じがするからではないでしょうか。
幼い子猫たちが、母猫のおっぱいを飲み、母猫の側で寝るような感じと、人の膝の上で寝る行為は、少し繋がっている様に僕は思っています。
飼い猫の心理として、猫は大人になっても、飼い主のことは母親の様に思っているといいます。
人の膝の上にいる限りは、外敵などの心配もなく、人(母親)に守られて安心できる…そう書かれた本やネットページも、今のところ見たことは無いので、これはあくまでも僕の持論です。
アクリル画(F3号だったかな)