ドルチェノフという名前の猫 5
僕と一緒にいるときのドルチェノフは、いつも笑顔でゴロゴロとのどをならしていました。
でも、猫の世界には色々とある様でして。
外から僕の元に帰ってきた時には、悲しい鳴き声をしてくる場面も何度かありました。
当時、小学校に通う僕にも色々とあり、楽しい場面ばかりではありませんでした。
それでもドルチェノフと会えば、そんなことを忘れて遊んだものです。
そんな僕の色々とは、兄弟喧嘩であったり、いつも学校の宿題をやらずに叱られていたり、そんな感じのことです(--;)
ドルチェノフの場合は、なわばり争いが主だったのではないかと考えています。
ごくたまに、1~2週間とかの期間で、ドルチェノフは僕の元に帰ってこなくなる時がありました。
その後で、体の色んなところに怪我をして帰ってきて、悲しい鳴き声を僕に向けてしてくるのです。
たぶん、どこかの野良猫に攻撃されて、受けた傷なのでしょう。
むかし読んだ何かの漫画で、猫のなわばりのことを語っていました。
猫が他の猫のなわばりに入り込んでしまった時、その猫はなわばり内の猫に追い回され、なわばりの外に追い出されることになります。
そうして、逃げた先も別の猫のなわばりであることが多く、繰返しなわばりの猫に追い回されることで、その猫が本来帰るべき家やなわばりから遠のき、帰りたくても帰れなくなってしまう、という話を読みました。
ドルチェノフはノンビリしていつもニコニコしているから、ケンカもしないで逃げるばかりか、ケンカしても弱っちい子だと考えています。
ある日のこと。
僕は家に居て、ドルチェノフは外から家に帰ってきて、二階の僕の部屋に急ぎ足でやって来ます。
そして、僕のところにきて無言で固まってます。
いつもと様子が違うように見えて「どうした?」と話しかけていると、後ろから「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ー!!」という恐い何かの叫び声が聞こえてきます。
その鳴き声で振り替えると、肉付きのよい強そうな猫がドルチェノフを威嚇しているのです。
そこで振り返った僕とその猫とで目が合い、その猫は驚いて逃げていきます。
しかし、その猫のすぐ後ろには階段があり、その猫は階段を踏み外して転げ落ちていきます。
ゴトン、ゴトゴトゴトゴト…
その猫のことが心配で後を追おうとしましたが、すぐに外へ逃げていき、怪我なども確認できませんでした。
階段付近の床は木でできているのですが、何ヵ所かえぐれています。
きっと、その猫の爪痕でしょう。
むかしの記憶なので、イメージを膨らませている可能性もありますが、この地域のボス猫は、こんなにも恐い子だったのかと驚きました。
あの猫だったらドルチェノフどころか、人に飼われた犬や僕なんかでも、負けるかもしれません。
この頃の僕は、まだ知らないことばかりなのですが。
猫のなわばり争いで相手の猫が病気を持っていて、その争いで傷を負うと、猫エイズや猫白血病に感染する可能性があります。
以前に書いたそぼろくんも、恐らくはなわばり内のボス猫に攻撃され、猫白血病に感染したのでしょう。
この猫エイズや猫白血病は、猫どうしで感染はしますが、人には感染しません。
そういう病気や事故などを考えると、出来ることなら、猫は家のなかだけで生活させた方が、ずっと長く生きていける様です。