絵と猫とぐだぐだ ~髙木元就

雑記ブログです。趣味で絵を描いています。漫画やイラストなども含めて、幅広く絵の好きな人に読んで貰いたいです。

店長不在の店舗1 No.127

店舗の営業とヤクザ 

 退職までの働く期間がのびる程、このカラオケ店にまつわる色んな情報や噂等が耳に入ってきた。

 時期に退職する僕には、関与して深入りするべきことではないのだけれど、その耳にする情報から、大体の統合も出来ていく。

 

 このカラオケ店の歴代の店長は、毎回数年程で退職していく。

 待遇の酷さに不満を持って辞めるか、悪いことをしてクビになるか、どちらかしかない。
 その下で働く社員関係も、長く続いた者はいない。

 M店長の前とその前にあたる2代・3代前の店長はヤクザ関係者だった。

 前職がヤクザで、このカラオケ店を退職以降にヤクザに戻った者。

 ヤクザではなくても、家族や親戚にヤクザがいて、そのヤクザ達と絡んで違法なやりとりをしている者。

 そういう人達の繋がりから、カラオケ店のアルバイトや顧客等にも、ヤクザ関係者は入り混じっている。

 ヤクザ関係者が店長等になる以前から、この会社は管理職や一般従業も適当な者ばかりで、従業員はいつも悪いことをしているし、それを会社が管理せずに野放しにしてきた為、大事になってバレたことを契機として、従業員達は退職していく。

 このカラオケ店のある地域は、外国人が多くて、ヤクザや関係者も多い。

 警察も、この地域は管轄の一番端っこにあって、何かがあって通報しても、警察官が到着するまでに30分前後かかる。

 僕がカラオケ店で働いていた頃でも、地元でヤクザ関係での事件は幾つか起こっていた。

 店のなかで、ヤクザ関係者達から不当な要求をされたり脅迫されたりした時には、僕は立場的なものから戦ってきたけれど、本音としては恐かった。

 当時の事件をネットで検索すると、やはり幾つか出てきた。

殺人容疑で暴力団組員逮捕「けじめとしてやった」 神奈川県警 - イザ!

拳銃3丁所持で 組幹部ら再逮捕 容疑で県警など | 社会 | カナロコ by 神奈川新聞

 店の兼ね合いで存在を知っていた人物も、退職後にニュースなどで話題になっていたり。

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小林誠の生い立ち~生粋のヤクザ一家と4兄弟!驚愕の犯歴に殺人も? | 生い立ち〜今

 カラオケ店の利用客が帰った後、客室の清掃に行くと、そこで覚醒剤の忘れ物を見付け、警察へ通報したこともあった。

カラオケ店で、ヤクザの集会も定期的に行われていたり。

 常連客であるヤクザの組長から、利用料金の値引きや、店舗の外で会うことなんかも、よく求められた。

 店の外で会うというのは、交遊という名目ではあったけれど、相手は組長だ。

 僕のことを何も知らないのに、交遊なんてある訳ががない。

 色々と考えても、僕をヤクザ仲間に引き込むとか、このカラオケ店をヤクザの使いやすい店にする、という目的としか考えられない。

 社長の方針では、カラオケ店にヤクザは利用させないという方針を持っていた。

 過去に顧客がヤクザだらけになった頃に、社長は苦労して、ヤクザを店から全員追い出した、という自慢話のネタをもっている。

 しかし、S本部長の考えでは『ヤクザは、一般の人には手を出さない』という理屈で、『ヤクザであっても、よほどの騒ぎを起こさない限りは利用させる』という方針を持っていた。

 僕は社長との直接的なやり取りを禁じられていたので、社長の方針などは本当の退職間近まで知らず、S本部長の方針だけを聞かされていた。

 不当要求を拒んだ結果として、僕がヤクザに殴られようと、唾を吐きかけられようと、それを『よほどの騒ぎ』とは認めては貰えない。

 僕の働いていたカラオケ店や地域的なものは、こういうものだった。

 

S課長の罠

 M店長の退職直後、パチンコ店が大変なことになっている、というS本部長の話から、僕の休日対応は出来ないという話となった。

 新店舗でのトラブルが多発していたのは事実ではあったけれど、 実際の処は、S本部長が僕やカラオケ店のことで、何かしらの対応するのを面倒くさがっていただけのことだった。

 S本部長にはカラオケ店の管理責任がありながら、その責任を適当にしている処を、S課長は見逃さずに罠を仕掛ける。

 M店長が退職したことで人員は減っているので、アルバイトの出勤日数は増えたのだが、それを『人件費の無駄遣いをしている』とS本部長へ責める。

 S本部長はたまにしかカラオケ店に来ないので、店舗内がどの様な状況になっているかも把握しておらず、僕が無駄にアルバイトを出勤させていると信じ込む。

 事実の確認もしないまま、M店長がいた時以上の人件費(アルバイトのシフト)の削減を強要してくる。

 そのことに対して、僕から説明しようとしても、S本部長もS課長も怒鳴り散らし、こちらの話には耳を傾けない。

 M(元)店長から聞いていた社長の意向では、カラオケ店は平日でも3人体制で営業することとなっているが、平日の半分以上の時間は、僕一人で営業する状況へと追い込まれる。

 一人でカラオケ店を営業すると、まともに店は機能しない。

 料理のオーダーがきても、新規顧客の対応やドリンクのオーダーを優先する流れとなる。

 料理がすぐに出せずに『いつまで待たせるんだ』とクレームがつき、『手がまわらないから料理が出せない』とオーダーを断ってもクレームがつく。

 クレームがつくと、クレーム対応が中心となってしまい、他の顧客の対応が出来ず、そのことで新たなクレームもつく。

 週末の閉店時間は27時なのだが、23時辺りでアルバイト達はワガママを言って帰る場面も多く、そういう場面でも僕は一人となる。

 客室は満席に近い状態で対応しきれず、クレームがつきながらも閉店を迎える。

 酷い時なら、朝の6時近くにようやく全ての顧客が帰り、そこから後片付けをしていく。

 でも、翌営業日の12時までには片付けの作業は終わらず、一時間だけ仮眠をして、翌日の勤務・営業を始めたこともあった。

 こうなる前に、上司へ助けを求めても「お前ごときがどうなろうと、俺の知ったことじゃない!」等と怒鳴られるだけで終わるもので、助けを求める考え方も持てず、意地になって仕事をこなす。

 人件費の削減が、店舗の営業や売上げを圧迫しているのだが、その状況をS課長は会社幹部達へ『カラオケ店の運営が下手すぎる』と語り、S本部長を責める。

 S本部長は店の状況を全く把握しようとしないまま、S課長に責められたことを基に僕のことを責める。

 たまに、S本部長はアルバイト達へ「高木はどうせ、ロクに仕事もしないでサボってばかりなんだろ?」という質問をする。

 アルバイト達も、S本部長と僕をバカにするのが習慣化している為に、面白がって陥れるつもりで返答をする。

「高木は仕事なんか全然していない」

「高木は使えない」

「高木はいらない」

 それを聞いたS本部長は「やっぱり」と納得し、そのことでも僕を責め立ててくる。

 そこに僕が反論した処で、前向きな話し合いになったこともない。

 

 こんな状況ばかりで、僕は職場を放棄しようかと考えた時期もあった。

 職場放棄と同時に、労働基準監督所へ被害を訴えたり、訴訟の手続きを始めたり、そういう行為で会社へ報復することこそ、自分の立場を守る本来とるべき行為なのではないだろうか。

 それでも僕は、愚かにも思い止まってしまう。

 思い止まろうと考えた要因は幾つかあって。

 ひとつには、この狂った状況を、僕個人の努力でひっくり返すことはできないだろうか…そこへ挑戦してみたい気持ちを持っていた。

 もうひとつには、この二十歳前後のアルバイト達に対して、悪いことをしているのに注意する者がいないということに、かわいそうだという考えが湧いていたことにある。

 

 

 

 

 

 

 

 店長がヤクザ関係者だった頃に入社してきたアルバイト達は、大した従業員教育も受けず、社員達の身勝手さを真似等をして、この時に至っている。

 それをS課長は、事務員や清掃員達からの話などもあって、よく知っていた。

 だからM(元)店長がいた頃から「なんでこんな仕事をしないアルバイト達を辞めさせないんだ」と、S本部長や M(元)店長へ強く責めてていた。

  それからM店長が居なくなった後には、僕に対して「今いるアルバイト達を、全員辞めさせなさい」責め、息巻いていた。

 実際の処。

 僕には何の権限もなく、アルバイトが悪さをしていることに注意しようとしても、S本部長から「お前は辞める人間なんだから、余計なことはするな」「何もするな」等と、よく怒られていた。

 だから、このアルバイト達のことに対して、僕は何かをするべき立場ではなかった。

 でも、僕の持つモラルや人生観の様なものから、黙ってはいられず、S本部長やS課長の意向を無視して動き始める。

 そのことでまた、絵を描くことから遠ざかっていくことが目に見えていて、それは哀しいのだけれども。
 それでも、僕が信じ・感じる考え方やモラルを基に頑張ろう。

 絵は描く行為だけが絵ではない。

 画学生の頃に読んだ美術雑誌で、若林先生(大学授業の講師であり美術館職員)の書いたこんな記事を思い出す。

 日本画画家の安田靫彦から、弟子の片岡珠子へ伝えた言葉。
『絵というのは、意図せず、描く側の何気ない考えや習慣が表れる場合がある。

だから、絵描きは普段の何気ない習慣からきちんとしていなくてはならない』

 この職場のこんな状況に、僕は知らない振りを決め込んで逃げてはいけない。

 そういう人間になってはならない。

 ここで頑張ることも、どこかで僕の絵を深める事に繋がるかもしれない。

 そう自分に言い聞かせ、自分を奮い立たせていく。