パチンコ店への就職 No.120
パチンコ店へ入社
リーマンショックの影響下で、なかなか仕事を選べない状態となっていた時期。
飲食店かパチンコ店か新聞配達か、僕の選択肢はそんな辺りに絞れていき、そういう仕事であれば、まだ仕事にはありつける感じであった。
そのなかから、最終的にはパチンコ屋で働くこととした。
僕には、色々とヤケになって、パチンコに熱くなっていた時期もあるもので、パチンコなら他の仕事よりも熱を持って打ち込めるのではないか、と考えた。
仕事としてのパチンコ屋のことは何もわからず、給料は1番低く正社員募集のところを選んだ。
給料の高いとか安いとかいうのは、きっと何かしらあってのことだろう…
例えば、店舗の顧客数の関係で仕事の大変さに違いがあるとか、立地場所の関係とか。
それでも何年か頑張っていけば、そのことで少しずつでも給料は上がっていく筈で、何年間か働いたトータルで考えたなら、きっと大きな違いはないだろう。
1や0の状態から入っていく業界のことなのだから、生活できる位の給料額ならば、入社時の給料額は拘らないでいよう。
これまでは正社員という雇用形態を避けてきたけれど、まずは絵を描く環境をきちんと整える為に、どんな内容でも自分に出来ることを頑張ろう。
未経験の仕事に対して、不安な気持ちはある。
でも、絵を描く為に頑張ってきた気持ちを新しい仕事に向けて頑張りさえすれば、何だって出来る気がする。
あくまでも、当時の僕はそう考えた。
働きながら色々と知っていくこともあるけれど、それはまた別の話としておく。
僕は元々、その入社した会社の新店舗でのオープニングスタッフになる予定だった。
そういう求人に応募したのだけれど、そうはならなかった。
そういう流れとなったのは、面接時に「いつから働きにこれるの?」と質問され、僕は「いつからでも大丈夫です。出来れば、少しでも早くに働き始めて、仕事を覚えていきたいです」と返した。
そのことで、新店舗の研修が始まるまでの間、既存の店舗で働く事としたのだが、既存の店舗も人が足りないということで、いつの間にか僕は既存の店舗のスタッフと処理されていた。
入社初日には社長と顔を合わせ、少し会話をした。
「仕事というのは楽しいぞ」
「10年先、自分がどう在りたいかを考えながら、今を頑張るんだ」
そう声をかけて貰った。
途中、僕が今回の転職するまでの過程で借金をしてしまった(急な病気や職場の解雇や、就職活動に時間がかかったこと等)という話をしてしまい、社長から見た僕の印象はかなり悪いものとなっていた。
社長的には、独り身で借金をしている者というのは、どうしようもないクズの様な者達だという考えがあった。
それに加え、派遣労働者というのはいい加減な人間で、派遣労働者として働く期間が長いという者は信用できないという思い込みもあって、僕という存在はそれ等に当てはまっていた。
僕自身、学生を卒業してから、一般的な会社員としての生き方をしたことはなくて。
その上、思うようにいかないことばかりで、空回りしながら今に至っている。
だから、僕のことをクズみたいな存在だと言われれば、それを受け入れるしかない。
悪い印象を持たれた後に、僕は社長に「これから頑張ります。宜しくお願いします。」と言っても、社長は「最初はみんなそう言うんだ」「どうせすぐ辞めるんだろ」等の冷めた言葉をかけてくる。
そのことで(他にも細く至らなかったこともあったのだが)、僕を面接し採用してくれた新店舗のY店長へ、既存の店舗のS店長から「なんであんな奴を採用したんだ」等と責められていたそうだ。
そんな話を、僕は入社から半月程経過してから耳にしていく。
こんな僕のせいでY店長には迷惑を掛けてしまったのだと、申し訳ない気持ちにはなった。
同時に、こうも考えていた。
『僕の失態がY店長の評判に繋がるのなら、これからの頑張りもY店長の評判に少しは繋がる筈だ。
だから、これからの仕事をしっかりと頑張り、いつかY店長と一緒に仕事をする機会が来たときには、Y店長を支え助けられる様な存在になろう。
とにかく、いま目の前の仕事をしっかりやっていくことから始めよう。』
当時の僕は、とにかく前向きに考えて頑張ろうとしていた。
従業員
入社してから数日くらいから、先輩従業員達の様子のおかしさに気付く。
ある人物は、自身のやる気の無さを自慢し、ある人物はいつも上司の居ない処でいつも怒っている。
僕は自分の出来る範囲で、何でも頑張ろうという意気込みを持って働いているのだが、先輩従業員たちの手前、頑張ろうとする行為や考え方が恥ずかしい行為であり、馬鹿にされている様な感覚になっていく。
そういう空気を読まず、流されないのが僕ではあるのだけれど、そういうものは大概、後のトラブルや支障になっていく。
職場に多少なれた頃、数人の先輩従業員から仕事後にご飯を食べに行こうと誘われ、一緒に食事へ出かけた。
その食事での場で、主にはS店長を批判する内容の話を幾つか聞かされた。
トラブルになったお客さんを駐車場で殴っていた、○さんと不倫をしている、役職者にある○が仕事をしない、女性従業員へのセクハラ発言がある、S店長・S常務共に従業員の扱いが酷い。
この職場は酷い所で、定年まで居ることを考える会社ではない。
等々。
彼等は僕へ、そういう職場の不満ややる気の出ない気持ち等に共感を求めてくる。
なるほど。そういう職場であることは理解した。
しかし、僕はそういう事柄に左右される人間ではないし、まわりがどうであろうと、僕はいま目の前にある自分の仕事を頑張るだけだ。
彼等にはそう話して返した。
職場環境や上司が気に入らないから、自分も仕事に対して手を抜く。
そういう考えを、僕は賛同できなかった。
環境や上司が気に入らないなら、自分はそういう存在にならない様に努力するべきではないかと思う。
だから、彼等がどこかで仕事をサボり、職場内で誰かの陰口を叩いていても、僕はそういう状況に流されないよう努めた。
この意識の違いは、次第に彼等と僕との大きな溝となっていく。
それから、その溝が職場で表面化してくると、上司も含めた会社内の人間関係に、その溝は連鎖して影響していく。
その感じが、美術大学での人の動向や人間関係と色んな面で似ている様に思えていた。
入社してから3ヶ月ほど経過して、僕はアルバイトから正社員にしてもらえた。
先輩従業員の話では、この3ヶ月という期間で正社員にしてもらうというのは異例のことで、普通は半年から一年くらいかかるとのこと。
因みに、僕と同じ時期に入社した新店舗の従業員達が正社員になったのは、早い者はそこから3ヶ月くらいしてからで、遅い者は半年~一年くらいかかっていたと思う。
それから数ヶ月して、業務命令で半月ほど新店舗の応援に行く。
その新店舗では、僕と同じ時期に入社した人達が働いている。
本来なら一緒に働く筈だった同期の人達であり、きっと僕以上に頑張っているだろうと期待を持って行った。
しかし、その新店舗の殆どの従業員達も、職場環境や上司達のことに怒り、不貞腐れている。
なかには意欲的に働いている人物もいるのだが、不貞腐れている人達との間に大きな溝が出来ていて、いつも陰口を叩かれている。
僕のいた店舗も新店舗も、従業員の殆どが不満を洩らしながら不貞腐れている。
そんな彼等へ僕は、「それではいけない」「大人気ないんじゃないか」と声をかける。
職場環境や上司のことが不満であれば、仕事を頑張り成果を上げることで見返すべきであり、手を抜いたり誰かの足を引っ張ることで自分の正当性を主張するのは間違っている。
僕は対立する覚悟を持って(少し弱気だったが)、ある人物へそう発言した。
その返事として、こう言葉を返された。
『君は真面目にやっているから、君はそれでいいと思う。
でも、俺には俺のやり方があるんだ』
そんなやり取りを経て、これから何か(対立等)が起こるのではないかと心配しながらも、一緒に働いていた。
給料日がきて、みんなで給与明細書を見せあった時、同じ時期に入社した正社員のなかで、僕だけが1~2万程(細かな額は覚えていない)給与額が高かったのを知り、皆で驚いた。
それは、働いている店舗の問題なのか、僕のしている仕事に対する評価だったのか、正確な処は今もわからずにいる。
この件も、後々には色々と響いてくるのだけれど、このブロクではその辺りに触れずに終わるだろう。
僕の在籍していた店舗も新店舗も、会社を中心で動かしている経営者(社長)は同じなのだから、結局は同じ道を辿るものなのだろうか。
どちらの店舗の従業員達も、似通った不満を持っていて、それを店舗でどう押さえ付けているかの違いしか見えないでいる。
強く押さえ付けて従業員達を黙らせている方が、社長からは『うまく人を扱っている』という印象や評価を受けるけれど、根本は何も変わらない。
僕も職場環境等に不満は持っていたが、僕は自分の出来ることや信じるやり方をしっかりやっていこうと考えるばかりだった。
それから会社の指示により、元々の店舗へ戻り働くこととなる。
パチンコ店の話とは関係ないのだけれど。
下の画像は、この新店舗へ応援に行っていた頃に描いていたもの。
薫り(日本画絵具)