そぼろくん 6
そぼろくんがおしっこまみれになっていた日の翌日、仕事から帰ると、トイレはきちんと使っていました。
トイレ問題は、場所に気付けなかっただけの様で、悪いのは飼い主側である僕だったのでしょう。
そぼろくんの排泄物を見て、喜んで褒めている僕の姿も変な場面でしょうが、まぁ良かったです。
トイレ問題に関しては良かったのですが、そぼろくんは目に見えて体調を崩していきます。
動物病院では、最初に検査で行ってから「一週間後に来てください」と言われていました。
それでも、寝床に置いているタオルには、口内炎が原因と思われる血の染みを見掛ける様になります。
ご飯も、やっぱり食べません。
それから、粘着質のあるヨダレを垂らし、表情も辛そうにしています。
そんなそぼろくんを見て、一週間も経ってはいませんが、動物病院へ連れて行くことにしました。
病院では、そぼろくんに注射をして、もう少し強い薬を処方してもらい、また様子を見ることとしました。
病気で、一番苦しく弱っている時です。
僕は、そんなそぼろくんの事がずっと心配ではありました。
でも、仕事の兼ね合いから、そぼろくんのことを殆ど構ってあげられません。
これから何ヵ月かしたら、そぼろくんともう少し一緒に居る時間を作ろうと、今は退職に向けて働くことしかできません。
こんな職場環境に追いやった会社へ、僕には腹立たしい気持ちも有りました。
でも、それで今この仕事を適当にして職場放棄をしたならば、僕の下で働いてきたアルバイト達を不幸にしてしまいます。
そんな気持ちを、僕は強く持っていました。
仕事から帰って何となく座っている時、そぼろくんは僕の膝元にやってきて「膝で寝させて」と主張してきます。
そぼろくんを膝に乗せて、撫でながら「辛いだろうけど、寂しいだろうけど、今は我慢してね」といった言葉を僕は何度もかけてきました。
きっとそぼろくんは、僕が何を言っていたとしても、ゴロゴロと喉をならし、身を委ねるだけだったでしょう。
それから動物病院へ行く約束の日の前日には、そぼろくんの調子は少し良くなります。
動物病院へ行く二日前の夜から、そぼろくん回復の兆しがありました。
画像に関しては、もうストック切れでして。
この画像は、そぼろくんが口を半開きにしているのを、下から撮影して確認した時のものです。
それまでの何日かは、そぼろくんは寝床で大人しくしていて、たまにヨロヨロと出てきては「膝で寝させて」と主張してくる感じでした。
その様子はこの日も変わらないのですが、僕が布団に入って寝ようとした時に「にゃ~~ん?」と一回だけ鳴きました。
今まで殆んど鳴き声を聞かせてくれなかったそぼろくんが、ここでひと鳴きしたのです。
きっと、口内炎が少しだけ良くなって、声を出してみたのではないでしょうか。
それから動物病院へ連れて行く前日、ほんの少しだけですが、そぼろくんが自分からご飯を食べました。
それまでは、全くご飯を食べなくなっていて、液状のご飯(おやつになるかも?)に薬を混ぜ、舐めさせていました。
その舐めさせることにも僕は困っていた状態で、無理矢理でも口にご飯(薬)を入れてやるべきだったのかもしれません。
そぼろくんは、人の都合を判っている様な気にさせる、賢くて人懐っこくて大人しくて、少し不思議に思えた子です。
それでも、やはり動物病院での検査や治療は嫌な様で、二度目の時は、大人しいながらも微かに逃げたがっていました。
キャリーバックに入って運ばれている時は、普段は全く鳴かないそぼろくんでも、寂しい声を出しました。
そんな動物病院へ、今度で三度目の通院となります。
昔に見ていた漫画等の猫達は、飼い主がキャリーバックを用意した時点で、何かを察して逃げていきます。
ある人のブログでも、その様な話を読んだりしました。
そぼろくんもそうなるのではないか…などと考え、僕は病院へそぼろくんを連れて行く毎に、ちょっとした小細工をしていました。
まずは寝床の横に、キャリーバックを入口の開いた状態で、置いておくのです。
そうすると、そぼろくんは「丁度良いスペースがある」と気付くと、自分でなかに入ってくつろいでくれます。
後は、キャリーバックの入口を閉じて、チャックもしたら、動物病院へ運ぶだけです。
この小細工に、そぼろくんは毎回引っ掛かってくれました。
逆に、動物病院から帰るときは、自分からキャリーバックに入ってくれるもので、通院に手こずることはありませんでした。